介護1年生の頃

私が最初に介護のお仕事に就いたのは地元の「デイサービス」でした

定員が23名で 日々20名前後の利用者さんが通っておりました
もともとサービス業の経験はあったものの介護は初めての経験で 右も左もわからない素人でしたが

新しい事を覚えるのが楽しくて
利用者さんに可愛がられたくて 楽しんでもらいたくて 夢中でした
思い返すと先輩達は何もわからない私に 一生懸命指導してくださり 支えてくれていたんでしょう

泣いたり笑ったりと忙しい性格の私は 時には壁にぶつかって
ビール片手に居酒屋で相談にのってもらったり はたまた先輩にぶつかったりもしました
さぞ生意気だったことででしょう  

「あなたはまだ1年生、うまくいなくて当然なんだよ」 といつも言葉をかけてくれました  
  でもこの仕事を辞めたいと思う日は一度もありませんでした
私も早く一人前になって 誰かの役に立ちたい!と必死でした
  今でも自分の支えになっていると言ってもいいエピソードをここに書きます

  脳卒中の後遺症で右麻痺のTさん 左足に装具を付け
 杖歩行の方で 無口で頑固で強面のいわゆる頑固おじいちゃんでした
歩行訓練も「そんなもんやらね!!」とか
ゲームも「だめだ!!」とか「うるさい」とか

経験の少ない私にとっては最初はかなり怖かったですが
先輩たちに教えてもらいながら 怒鳴られても怯まずに
「知りたい、知ってもらいたい、笑って欲しい」と 関わりを深め 
少しずつ打ち解けて笑顔を見せてくれるようになりました

そのうちに私がお散歩に誘うと
すんなり立ち上がってくれるようになり 先輩に
「すごいね、あなたが誘うと行くね」なんて褒められると
俄然やる気になりました(先輩 さすがお上手です)

そのTさんの入浴の日 脱衣場から聞こえてくる怒鳴り声 Tさんの声です
基本入浴は同性介助でしたから
私はカーテンの外のこちら側で 他の方の排泄介助やその他のお仕事をしていました
徐々に怒鳴り声はエスカレート 「だめだったら だめだ!!バカやろ~」と
頑として服を脱いでもらえないようでした

そもそもTさんは入浴拒否が強く
月に数回しか入れていない状況 失禁もあったのですがパット装着も拒否 家でも
家族の言うことも拒否されて
トイレに間に合わない事が多かったようでした そのせいもあり

太もものタダレがひどくて 火傷のように赤く広範囲にただれていました
しかし脱衣場からの怒鳴りは収まらず しまいには杖を振りかざして・・・

「今日も無理か・・・」「拒否が強いね」と 職員のあきらめムードも漂う中
管理者Kさんはあきらめませんでした
何度も何度もゆっくりと言葉をかけています 時々叩かれそうになっているようで
「あっ!ちょっとまって、まって」と制止する声も聞こえてきました
どうするのか心配でカーテンの隙間からにちらちら見ていましたが

管理者Kさんは叩かれながらも

目線を合わせていて 座っているTさんの足元に正座している位置で いかに入浴が大切か
気持ちよくなってもらいたいか 皮膚を清潔にして薬を付けたい事や 尿の匂いがしている事を
家族も心配している事も 真剣に丁寧に根気よく
愛情を持ってTさんに伝えていました やりとりは30分続き(次の業務もありその時の30分は大きいものだったと思います)

Tさんはやっと入浴してくれる気持ちになり 洋服を脱いでくれ無事に入浴出来たんです
さっきの事はまるで無かった事のように
管理者Kさんと他愛無い言葉を交わしながら 浴槽につかり
「はぁ~」っと気持ちよさそうな声までも聞こえてきました
    その日の夕方 Tさんをご家族のもとに送った時

いつものように心配そうに出てきた奥様に 入浴出来た事を伝えると

とっても喜ばれ 涙を浮かべて「すみません、すみません、ありがとうございます」と

何度も何度も頭を下げられていました
  その涙を見た時に ここも含めてすべてケアなんだなと
管理者Kさんの愛情の深さと この仕事の重み、
使命を感じ あきらめない姿勢の大切さを教えてもらいました

「今日も拒否が強くて」 「無理でした、すみません」 って言えば 言ってしまえば
奥様だってすぐに納得するでしょうに・・・  
きちんとご本人に伝えて納得頂いて 入浴してもらう   説明力、
方法論いろいろあろうかと思いますが 私は愛情がTさんに伝わったのだと思いました

 

いつかこんな素敵な介護が出来る職員になりたい!と思ったのでした
私の介護1年生ははそんな素敵な先輩たちに支えられ始まったのでした
今でもその管理者Kさんにはお世話になっております

 

まだまだ 修行の毎日ですが 憧れの先輩に少しは近づいているでしょうか・・・

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